2013年05月07日

【石炭火力を使え】

政府が石炭火力の見直しに舵を切りました。

「政府が石炭火力発電所の新増設推進にかじを切った。新増設に必要な環境影響評価(アセスメント)の審査期間を現行の3年から、新増設は2年強に、建て替えは1年強にそれぞれ短縮する新基準を先月26日に発表。原発長期停止に伴う火力燃料費の増加が電気料金を上昇させる中、発電単価が安い石炭火力の新増設をやりやすくするのが狙いだ。しかし、原発再稼働の可能性もある中、数年かかる建設計画は立てにくく、1000億円超の建設コストもネックになっている。新増設が進むかは未知数だ。【浜中慎哉】
 「環境アセスがわかりやすくなり、大変ありがたい」。東京電力の広瀬直己社長は4月30日の記者会見で、アセス新基準を歓迎した。

 石炭火力のメリットは、1キロワット時当たり約4円という発電単価の安さだ。

 東日本大震災以降、電力各社は液化天然ガス(LNG)火力と石油火力を拡大させたが、LNGの発電単価は石炭の2倍超の11円、石油は4倍の16円と高く、電力会社の経営を圧迫。13年3月期連結決算は、北陸と沖縄を除く大手8社が最終赤字を計上した。

 LNGや石油の比率を落とし、石炭を増やせば、燃料費を削減できる。東電は大型原発2基分に相当する260万キロワットの電力を他社から調達するための入札を実施中だが、調達分の燃料がすべて石炭になれば、すべて石油の場合に比べ、燃料費は年間約1750億円安くなる。

 新基準では、運転中の最新鋭の石炭火力以上の環境整備を求めており、基準となるのが、Jパワー(電源開発)の磯子発電所(横浜市)。従来の火力発電所と比べ、二酸化炭素(CO2)排出量は2割カットでき、酸性雨の原因となる硫黄酸化物も95%以上除去可能だ。仮に米国と中国とインドの全ての石炭火力発電所を磯子並みの施設にすれば、日本の年間排出量より多い14億トンものCO2排出量を削減できるほど。日本が誇る高性能技術は、環境ニーズが高まるアジア新興国などへのインフラ輸出で需要が見込める。

 電力会社にとっては、すでに確立した「磯子並み」の環境性能を備えればいいという条件は「高くないハードル」(電力大手)。経済産業省幹部は「現在のLNG頼みは安定に欠ける。将来は石炭とLNGが同等の規模になっていくのが理想」と話し、今後、他の大手電力や独立発電事業者(IPP)などで、新増設の動きが活発化することを期待する。」(5月6日付毎日新聞)


【突然死する原発は無用の長物】

アメリカで急速に進むシェールガス革命が、2年前に起きた福島第一原発事故による原子力の見直し機運と相まって、世界のエネルギー地図を塗り替えつつありますが、もうひとつエネルギーについて忘れてはならないのが高効率の石炭火力発電です。この記事にもあるとおり、日本の最新鋭の火力発電設備は1キロワット時当たり約4円という発電単価の安さとともに、従来の火力発電所と比べ、二酸化炭素(CO2)排出量は2割カットでき、酸性雨の原因となる硫黄酸化物も95%以上除去可能となるという一石三鳥の発電方式なのです。

それに比べて原子力発電は日本ではもはや電力会社のお荷物以外の何物でもありません。なぜなら規制委の新しい安全基準をクリアするために膨大な安全コストをかけなければならないこと、そして再稼働しなければ不良債権化して電力会社を債務超過、さらには破たんへと追い込む可能性があるからです。
そして忘れてはならないのは、一旦事故を起こせばフクイチのように連鎖的に隣接する原発の稼働も危うくなり、すべての原発を止めなければならなくなる巨大なリスクを抱えていることです。

それでも原発を温存しようとする安倍自民党政権や原子力ムラの狂気ぶりはあきれるばかりですが、政府には石炭火力によるエネルギーの選択肢の多様化に舵を切ることで少しはリスクを減らす知恵が残っているようです。今のままでは次の原子力巨大事故はまた起こる、それを回避するためにも石炭火力をはじめとする原子力以外のエネルギーの利用、そして原発の不良債権化による電力会社の経営危機を回避するための方策を早急に国民の前に提示すべきだと思うのは僕だけでしょうか?  



2013年03月04日

【玄界灘産】

玄界灘で養殖された真珠が世界デビューを果たします。

『宝飾品大手のミキモトが6日、玄界灘の離島・相島(福岡県新宮町)で養殖したアコヤガイの真珠ネックスレスセットを発売する。真珠養殖は波の穏やかな内湾で行うのが常識で、外海での商業ベースの養殖は世界でも初めて。内湾の養殖場が赤潮や感染症の被害に遭い、外国産真珠に押される中、同社は玄界灘産の「奇跡の真珠」で国産真珠の高品質をアピールし、巻き返しを図る。(田中一世)

養殖真珠の国内の主な産地は愛媛・宇和海や三重・英虞(あご)湾、長崎・大村湾といった、潮流が穏やかでプランクトンが豊富な内湾だ。これに対し外海は、母貝の栄養源であるプランクトンが波に流されてしまうため、養殖地に適さないというのが定説だった。

ところが平成12年、福岡県水産海洋技術センターが、7キロ沖の相島周辺の海で、母貝となる天然アコヤガイの生息を確認した。県、九州大、ミキモトの3者が共同研究を進めるうちに、相島沿岸は特殊な海洋環境であることが判明した。

相島がある玄界灘は、南西から北東に向かって対馬海流が通っている。この対馬海流が博多湾に流れ込み、湾内の豊富なプランクトンを連れて相島周辺に流れていく。これがアコヤガイが生息できる理由だ。

赤潮被害や感染症の被害に遭いにくい外海にありながら、内湾のメリットをもつ相島周辺にミキモトは着目。実験を繰り返し平成19年から本格的な養殖を開始した。

初収穫の20年1月は8千個だったが、順調に生産量を増やし、今年1月は17万個に。これまで6年間の生産量は計約50万個に達している。業界団体の日本真珠振興会は「国内でも海外でも、外海での真珠養殖の事例は聞いたことがない」という。

ミキモトが相島に注力するのは、内湾での養殖が危機的状況にあるからだ。

平成8年ごろから、英虞湾など国内の主産地で感染症が流行し、母貝の大量死が続いている。このため養殖業者は感染リスクを避けようと長期養殖をやめるようになった。現在国内で養殖される真珠の9割以上が、核入れから浜揚げまで6~8カ月程度の短期養殖だ。

養殖期間が短くなるにつれ、国産真珠は直径8ミリ以上の大玉が少なくなり、海外産の輸入品に押されるようになった。

これに対し、外海の相島では1年半以上かけた「越年物」の養殖が可能。その分、真珠層が厚くなり、大玉になりやすい。実際、相島真珠は「ほとんどが大玉」(ミキモト)という。

ミキモトは現地に子会社「ミキモト博多真珠養殖」を設立。収穫した真珠から、一定基準を超える品質の真珠をえりすぐり6日、高級ネックレスとイヤリングのセット(3サイズで約68万2500円~199万5千円)を発売する。取り扱い店舗は当面、福岡県内の5つの百貨店(岩田屋本店、同久留米店、博多阪急、井筒屋小倉店、同黒崎店)となるが、生産量が増えれば、県外での発売を検討する。

ミキモトの広報担当者は「最初は『こんな外海では無理だろう』といわれていたが、定説を覆した。日本の真珠の品質の高さを、相島から発信していきたい。大きな挑戦です」と語る。

また、福岡県も地域振興につながるとして、PRに力を入れる。県水産振興課は「初の福岡県産、しかも外海産の『奇跡の真珠』です。新たな特産品になるし、イメージアップにもつながる明るい話題」という。

小川洋知事は1月23日、表敬訪問した吉田均・ミキモト社長に「日本の10大発明の1つが真珠養殖。わが県の相島産真珠を使った商品が世の中に出ていくことは大変うれしい。1人でも多くの皆さんに愛されることを願っている」と述べた。』(3月3日付産経新聞)

【相島の奇跡】

この記事にあるとおり、平成12年に九大と福岡県とミキモトの三者でスタートした新宮町相島での真珠養殖が14年近い歳月をかけて世界デビューを果たします。相島とは福岡県粕屋郡にある新宮漁港から北西約7.5キロメートル、町営渡船でわずか17分の海上に浮かぶ小さな島ですが、万葉集や続古今集にも歌われた歴史ある島であり、江戸時代、鎖国政策をとるなかで唯一国交を結んでいた朝鮮からの「朝鮮通信使」を相島で接待し、文化交流の舞台となった島として知られています。

個人的にはもう20年近くヒラメやアジ、カワハギ狙いで釣りに通っている島として親しんでいるのに加えて、朝鮮通信使の歴史に惹かれて相島に関わる文献などを少しばかり調べたりしています。

その相島が真珠というもうひとつの大きな魅力を与えてくれることになるとは望外の喜びです。もう10年近く前からミキモトが島で真珠の養殖をし始めたことは釣りに通っていたので知っていましたが、外海での真珠の養殖は世界初であることや、相島の真珠は他の真珠に比べて大きいことなど全く知りませんでした。

高齢化が進む相島の人たちにとってこの真珠養殖が成功して大きな島の産業、収入源になってくれることを切に望みます。
  



2013年02月22日

【シェールガスに照準】

電力各社が福島の事故を経てようやく「当たり前の企業努力」に目覚め始めたようです。

『電力各社が、米国産の新型天然ガス「シェールガス」の対日輸出解禁をにらみ、液化天然ガス(LNG)基地増強などの受け入れ態勢整備に本腰を入れ始めた。原発停止で代替火力発電の燃料費負担が増している電力業界にとって、安価なシェールガスへの期待は大きい。ただ、「価格低減効果は限定的」(商社)との見方もあり、もくろみ通りにいかない懸念もある。

【自動車と燃料電池】「究極のエコカー」主導権争い 鍵を握るGMの動向

 東京湾に臨む東京電力の富津火力発電所(千葉県富津市)。20日、報道陣に公開された施設内では、ナイジェリアからの全長288メートルのLNG船が桟橋に横付けされていた。LNGは東電がスポット購入したもので、マイナス162度まで冷却されて体積が約600分の1の液体となった天然ガスがパイプで地下タンクに移された後、気化され、火力発電所でたかれる。

 東電は今後10年の経営改革計画で、調達するLNGの半分に相当する約1000万トンをシェールガスなど安価なガスに置き換えていく方針を掲げている。北米でのシェールガス価格は、東電が現在購入している原油価格連動のLNGに比べ約6分の1だ。液化コストや運賃を考えても大幅に安い。米国政府が対日輸出を許可することを前提に、2017年から輸入する契約を三井物産などと結んだ。

 シェールガスは他の天然ガスに比べ密度が低いため、受け入れ容量に制約がある。東電はシェールガス調達拡大計画の具体化の第1弾として、富津火力発電所内にタンク2基を増設するなど、10年間で総額400億円の設備投資で受け入れ態勢を整える予定だ。中部電力が大阪ガスと組んで米テキサス州のLNG輸出基地建設計画に投資するなど、将来のシェールガス輸入を見据えた動きは他の電力会社にも広がっている。

 ただ、LNG取引の実務担当者は、シェールガス輸入による燃料価格圧縮に懐疑的だ。電力中央研究所(東京都千代田区)が都市ガスや商社など14社のLNG取引担当者31人に聞き取り調査したところ、米国でのシェールガス開発コスト上昇や、北米の好調な内需、他のアジアの買い主との競合などから、調達価格の大幅な引き下げは難しいとの意見がほとんどだった。

 調査担当者は「原子力の長期稼働停止による日本の交渉力低下を訴える声も多かった。ガス調達価格低減には、調達先や他の電源などの多様化を進めるほか、交渉での政府支援などが不可欠だ」と指摘している。(吉村英輝)』(2月21日付毎日新聞)


【遅すぎる企業努力】

正直言ってこの記事を読んで唖然としました。今ごろ電力各社がシェールガスの調達に本腰を入れ始めた? それは暗に今までは燃料費を安価に調達するなんてこれっぽっちも考えていなかったことを暴露したということではないでしょうか。総括原価方式に安住して、原発の安全神話を人々に信じさせるための膨大な広告宣伝費や、資源国の言い値の燃料費、高額の役員給与などすべて原価にぶちこんで、世界一バカ高い電気代を押し付け、おまけに地震大国ニッポンに50基もの原発や核燃料サイクル施設を作り続けて国民を危険に晒し続けているのが公益企業とは名ばかりの電力業界とそれを後押しする国だったのです。

もういい加減に目を覚まして、電力各社は本当の経営努力をして、命を危険にさらし、電力会社を一瞬にして債務超過に陥らせる原発は政府に買い取らせ、本気で「正しい公益企業」としての道を歩んでほしいと思います。そのためには一刻も早く地域独占をやめさせて自由競争にさらすのが最も早道だと思うのは僕だけでしょうか。そうでなければ長年地域独占に胡坐をかいてきた彼らには本気で自己変革はできないでしょう。燃料調達も今の制度のままでは中途半端に終わる可能性大です。  



2012年11月13日

【エネルギー見通し】

米国が世界最大の産油国になるそうです。

『国際エネルギー機関(International Energy Agency、IEA)が12日発表した「2012年版世界エネルギー見通し」で、米国が2020年ごろまでにサウジアラビアを抜いて世界最大の石油生産国に浮上するとの見方を示した。

シェールガス採掘には反対運動も

 IEAは「米国で最近みられる石油とガスの生産回復は経済活動を促しており、世界のエネルギー市場における北米の立場を着実に変えている」と指摘。米国は現在、エネルギー総需要の約20%を輸入に依存しているが、35年までには実質的にエネルギーを自給する状態となり、他の大半のエネルギー輸入国でみられる傾向とは全く逆の現象が起こると述べた。

 米国では新技術の開発、特にシェールガスの採掘によってエネルギー市場が激変しつつある。シェールガスの掘削で使用されるフラッキング(水圧破砕)と呼ばれる技術は他国では規制が設けられたり、禁止されたりしており、賛否両論がある。』(11月13日付AFP時事)


【激変するエネルギー市場】

米国が世界最大の石油生産国になれば世界のエネルギー市場は激変するこは間違いありません。いや、エネルギー市場だけでなく、世界の政治・経済情勢そのものが大きく変わることになるでしょう。

先ず予想されるのは、エネルギー自給によって世界に対する米国の政治的自由度、発言権はより一層強くなり、米国の唯我独尊、多極化しているアジアやアフリカ、中南米への介入の増加につながっていくのではないかと危惧します。

それから米国内の原子力発電は、安価なシェールガスの普及によりますますコスト的に見合わなくなり、米国全体のエネルギーに占める原子力の割合は低下の一途を辿ることになるでしょう。これは米国の政策というより、市場の圧力でそうせざるを得なくなるということです。

そして日本はこの米国のエネルギー自給達成が見込まれる2020年ころにどういう影響が見込まれるか?原子力政策という観点から見ると、残念ながら資源の乏しい日本は米国のエネルギー事情がどうあろうと、石油や天然ガスへの依存は続くため、それらの資源の調達先が一部中東から米国に代わるだけで国家の生命線であるエネルギー確保のためには一定程度の原子力への依存は避けられないという方向に進むのではないかと危惧します。

2020年まであと8年あまり。この8年の米国の動きによって日本のエネルギー政策にとっても大きなパラダイムシフトが起こることは間違いなさそうです。
  



2012年10月31日

【関電が先陣】

関西電力が他の電力会社の先陣を切って電気料金値上げ表明を行いました。

『関西電力の八木誠社長は29日、電気料金値上げについて「具体的な検討を開始した」と正式表明した。原発停止に伴う財務悪化を食い止めるには値上げしかないとの判断で、九州電力も30日に値上げ検討を表明する方針。北海道、四国、東北電も値上げを模索しており、9月の東京電力に続き電気料金値上げが全国に波及する。

 値上げ時期や値上げ幅について八木社長は「未定」としたが、同社は13年4月にも家庭向けで平均15%程度、企業向けで20~30%値上げする方向で検討している。家庭向けは規制料金のため政府の審査対象になる。審査には4カ月程度かかるとみられ、その結果、関電は追加コスト削減などを求められる可能性がある。認可申請を伴う関電の本格値上げは第2次石油危機後の80年以来33年ぶり。

 関電が29日発表した12年9月中間連結決算は、最終(当期)損益が1167億円の赤字(前年同期は204億円の黒字)で、上期としては創業以来最悪だった。7月に再稼働した大飯原発3、4号機を除く原発9基の停止で、火力発電燃料コストが前年同期比1800億円増加。福島第1原発事故前との比較では、年7000億円の燃料費増となる見通し。関電は、原発による発電比率が5割程度と大手で最も高く、発表済みのコスト削減策だけでは燃料費増の影響を補い切れなかった。

 13年3月期通期の業績見通しは「未定」としたが、資源エネルギー庁の試算によると、大飯以外の原発が停止したままでは13年3月末時点の純資産額は前期比5820億円減の5747億円に減少、14年3月期中に債務超過に陥る可能性が高い。八木社長は「再稼働できない状況が継続すると財務体質が大幅に悪化し電力の安定供給に支障を来しかねない」と値上げへの理解を求めた。

 九電も、原発6基すべてが停止しており、エネ庁試算で今期4700億円の追加コストが発生し、13年3月末時点の純資産は3088億円まで減少する見通し。30日の中間決算発表で値上げの意向を正式表明し、関電と同時期の値上げ実施を目指す。北海道、四国、東北電も原発停止で赤字体質に陥っており、関電、九電に続く値上げを模索している。中部、北陸、中国電は値上げに慎重だが「今後も原発停止が続くようなら値上げも視野に入る」(中部電関係者)。東京電力も柏崎刈羽原発の13年4月再稼働ができなかった場合、追加値上げなどの対策が必要になる。【宮島寛、和田憲二】』(10月30日付毎日新聞)


【初めに値上げありきでいいのか】

「傲慢不遜」という言葉はまさに今日のニッポンの電力会社の姿勢を表すために作られた言葉ではないかと思うほど、八木社長の値上げは当然という態度にはあきれてモノも言えません。 「電力の安定供給に支障をきたしかねない」という脅しをちらつかせる様は、原子力発電を金科玉条として推進し、反面地域独占にあぐらをかいて経営の合理化努力を怠ってきた自らの経営の失敗をすべて電力の需要者である消費者や企業に押し付ける傲慢不遜な電力会社の姿勢を象徴しています。

最初は国家の原子力政策に協力してきただけだったかもしれません。しかし、最近では東京電力を頂点に電気事業連合会という業界団体が政府との力関係を逆転させ、原子力の安全対策もないがしろにしてきた結果が東電福島第一原発の核惨事だったことをもう忘れたのでしょうか。債務超過の可能性に至っているのは、そのツケが今回ってきたということです。特に関西電力は東電が国有化されてしまい、電力業界の雄の立場からずり落ちたことから東電に代わって地域独占の甘い汁を守るべくますます傲慢な姿勢を強めています。

関電をはじめとする電力会社は、ここは公益企業の原点に立ち戻って、お客様である消費者や企業のために自分たちがまず何をなすべきかをしっかりと反省し、資産売却や経営陣の報酬返上などにより肥え太った体質を思い切って改善すること、さらには不良資産となってしまった原子力施設の国家への譲渡などにまで踏み込んだ交渉を政府とやっていくべきではないでしょうか。いつもいつも、「電力の安定供給が脅かされる」とか「計画停電にするぞ」といった脅しだけでは国民は納得しないでしょう。
  



2012年09月07日

【本社が根抵当に】

あれよあれよという間にシャープはどんどん落ちていっています。

『シャープの本社(大阪市阿倍野区)と亀山工場(三重県亀山市)の土地建物に、追加融資の担保として計1500億円の根抵当権が設定されていたことが5日、分かった。国内の大手電機メーカーが本社と主力工場を担保に融資を受けるのは異例だ。
 登記簿によると、抵当権は、主力取引銀行のみずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行が、それぞれ750億円ずつを極度額(借金上限額)に設定。対象は、本社ビルと隣接する田辺ビルの土地建物(計約1万7千平方メートル)のほか、亀山工場の土地建物(約30万平方メートル)など。いずれも8月31日付で、提携する台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業との出資見直し協議が合意されるとみられた局面と重なる。

 シャープはこれまで、主に社債やコマーシャルペーパー(CP)などを発行し、市場から直接資金を調達。銀行から融資を受ける場合も、信用力を背景に基本的に担保を差し入れてこなかった。』(9月6日付朝日新聞)

【なぜこんなことに】

企業の落日というのは、かくも急激に、かくも簡単に訪れるものなんでしょうか。すでに海外の工場や、国内の太陽電池工場などの売却が次々と発表されていますし、従業員も2千人規模のリストラが予定されています。なぜこうなる前に経営陣は有効な手が打てなかったのでしょうか。

大阪市阿倍野区に本社を置くシャープは、僕らの学生時代は松下電器産業やソニーといった大手家電の狭間にあって、ユニークな製品を次々と世に出すことで確実に成長している伸び盛りの憧れのメーカーでした。東京の市ヶ谷に就職面接に行ったとき、海外展開を今後も積極的に進めていくという役員の自信に満ち溢れた言葉を今でも思い出します。幸運にも内定したのですが、思うところがあって入社はしませんでしたが、まさかあれから30年以上経って急にこんなことになるとは想像もしませんでした。

液晶パネルにあまりにも突っ込みすぎたからだとか、いろいろな理由が取りざたされていますが、あまりにも突然の経営不振に従業員の方々は不安な気持ちでいっぱいだと思います。

果たして、再建は可能なのか。素晴らしい技術力、企画力を持った会社だけに工場や人がバラバラにされていくのは惜しい気がします。いったんはリストラをしても、「シャープ」という名のとおり、もとの切れ味のいい会社としていつの日か復活することを願っています。  



2012年07月10日

【巨額損失事件】

トップトレーダーがマーケットで大負けして彼の属する金融機関の屋台骨を揺るがすような事態に発展することが時折新聞紙上をにぎわすことがあります。古くは1983年に大和銀行ニューヨーク支店のトレーダー・井口俊英氏が債券市場で11億ドルもの損失を出して、大和銀行がアメリカから撤退を余儀なくされた事件がありましたし、今年5月には米金融大手、JPモルガン・チェースが、金融派生商品(デリバティブ)の取引で20億ドル(約1600億円)の巨額損失を発表したことは記憶に新しい事件です。

ではこれらの巨額損失事件は単なるリスク管理の不備で発生したのでしょうか?リスク管理の責任者がトレーダーたちの能力を見誤ったのでしょぅか?もっと人間の生理的行動や意思決定に関わる部分はないのでしょうか?

こういった問題意識について、2012年7月9日付のタイム誌の記事「リスクファクター 銀行を破たんに陥れる行動原理とは何か?」("Risk Factor How biology can explain what drives banks to the brink of disaster" by John Coates, TIME magazine issued on July 9, 2012)に興味深い話が載っています。

【トレーダーを待ちうける罠】

金融機関の市場での失敗はトレーダーたちの能力、あるいはリスク管理の責任者の問題だというのが一般的な見方なのですが、この記事によれば最近の調査で別の見方も出てきたというのです。それは何か?

それは連勝経験がトレーダーを変えたというものであり、トレーダーの大失敗はヒトの生物学(human biology)で説明できるというのです。

リスクを取る時、ヒトはそのリスクを頭で考えるだけでなく、身体全体でリスクに対処しようとします。マーケットで重大なニュースが流れるとき、トレーダーの心臓の鼓動は高まり、息遣いは荒くなり、筋肉や胃は緊張し、汗が噴き出てくるでしょう。そのとき、トレーダーの身体は過剰反応を起こして病的な状態になり得るのです。

そういう状況になると、男性ホルモンのひとつであるテストステロンが多く生成され、ヘモグロビンが急増、脳に血液が多量に送られてトレーダーに過剰な自信をもたらし、どんどんリスクを取る気持ちにさせるのです。この状態が正のフィードバック状態になると動物の行動で言うところのwinning effectが生じることになります。すなわち、どんどんリスクを取りに行くことになるのです。そして正常な判断ができなくなっていく。

もちろん、この状態は勝ち続けた場合とは逆の、負けが続いたり、大きな負けに遭遇したときにも起こりえます。

【しばしの休息】

このような肉体的な危険信号については、スポーツ科学の世界では大きな環境変化が起こったときの当然と言えば当然の反応として対処の方法論があるわけで、トレーダーを統率するリスク管理者も見習うべきものではないでしょうか?すなわち、マーケットで大きな変化が起きたり、連戦連勝や連敗が続いているときには、リスク管理者がマーケットからトレーダーをはずして少し肉体的にも精神的にも休息を与えるという選択肢を与えるべきでしょう。

これは大きなリスクを背負っている現代企業の経営者にとっても大きな教訓となりえますね。  



2012年06月28日

【日本全国で怒号】

9電力会社の株主総会で怒号の中、すべての脱原発提案が予定通り否決されました。

『27日午前に始まった関西電力の株主総会。大阪、京都、神戸の3市が「脱原発」などを求めて株主提案し、筆頭株主である大阪市の橋下徹市長はじめ、3市のトップが出席し、質問に立った。今月16日には政府が大飯原発3、4号機(福井県)の再稼働を決定したばかり。原発の是非は、電力供給体制の在り方は--。会場となった大阪市北区のホールには過去最多の3825人(午後1時現在)が出席。会場外にも多くの市民グループが詰めかけ、熱気と緊張感に包まれた。

 「衰退産業が歩んだ道を今、関西電力は歩んでいる。将来のリスク説明が不十分だ」

 白の半袖シャツ姿の橋下市長は午前11時半ごろ、質問に立った。2階の最前列で右手にマイク、左手に資料を持ち、矢継ぎ早に質問を重ねた。「使用済み核燃料の最終処分場はいつまでに造りますか。発送電分離は2年後ですか。2030年に関電の原発依存度は何%になるのか。経営陣は原発が何基止まれば赤字になると想定しているのか」

 議長の森詳介・関電会長が「(質問期限の)3分経過しました」と質問終了を促した後も、「政権も代わる可能性があります。政策が変わり、原発依存度ゼロの流れになった時どう対応するのか」などと続け、発言は約4分に及んだ。退場の際にも右手を振り上げ、「議長、議事停止の動議です」などと叫んだ。会場では拍手が湧く一方、「ルールを守れ」「大阪市をつぶすな」などとヤジも飛んだ。ただ橋下市長は、株主提案した「可及的速やかな全原発の廃止」など急進的な内容には直接触れず、中長期的な取り組みをただした。

 大阪市長の出席は昨年6月の平松邦夫前市長に続き2年連続。今年は、門川大作・京都市長や矢田立郎・神戸市長も顔をそろえ、それぞれ質問に立った。

 橋下市長は昨年11月、関電への株主提案を公約に掲げて当選した。神戸、京都市にも協力を呼びかけ、一部の議案では3市共同提案にこぎ着けた。しかし、定款変更を伴う議案には3分の2以上の賛成が必要でハードルは高い。総会での質問も1人3分程度に限られた。

 橋下市長は26日、記者団に悔しさをにじませた。「3分では緊張感のある議論はできない。ただ、関電の経営方針への賛否が数字で表される意義は重い」【茶谷亮、林由紀子】』(6月27日付毎日新聞)


【いつか来た道】

これほどの市民の声、これほどの自治体の声が日本中に響き渡り、電力会社の認識の甘さを追及しているというのに、思考停止したまま「原発が大事、原発が大事」と呪文を唱え続ける電力の経営陣たち。もう経営能力どころか、精神異常をきたしているのではないかと疑いたくなるような「惨状」です。

日本が壊滅したかもしれない3/11のフクイチにまったく何も学ぼうとしない姿勢が、今年の株主総会も如実に表れていました。こんな姿勢では到底、いったん暴れだすと人知を超えて凶暴化する原発の放射能汚染事故に対処できるような英知も対策も生まれてくるはずはありません。

過去の過ちを認めたくない、原発停止が長引けば数千億の資産が負債に化けて経営破たんしてしまうという恐怖から、一寸先も見えなくなっている電力会社の無能な経営陣に原発事故の対策など求めるのは土台無理なことだと、株主総会の惨状を見て改めて思い知らされた気がします。

僕たち市民、国民にとって次の巨大事故発生まで残された時間はあまりないかもしれません。この人間たちの狂気をどうやって止めたらいいのか、逡巡してしまいます。橋下氏や猪瀬氏の勇気に続いて、絶対にあきらめない姿勢を示し続けるしか助かる道はないと肝に銘じるしかありません。
  



2012年06月27日

【株主総会】

今日は電力会社の株主総会が一斉に行われます。

『沖縄電力を除く電力9社は27日、定時株主総会を開催する。福島第1原発事故を起こした東京電力は実質国有化や経営陣刷新を株主に諮り、「新生東電」に向けて最初の審判を受ける。国内50基の全原発が停止する中、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働の準備作業もにらんで、「脱原発」を求める株主提案が相次ぐ見通しだ。
 東電は原子力損害賠償支援機構を引受先として1兆円の優先株を発行するための定款変更や委員会設置会社への移行を提案する。可決されれば7月25日に公的資本注入を受け、実質国有化される見通し。』(6月27日付時事通信)


【様変わり】

それぞれの株主総会で経営側と脱原発提案を出している株主側で激しい議論が展開されることが予想されています。その筆頭は記事にもあるように東京電力であり、大飯の再稼働を進める関西電力、浜岡原発を停止中の中部電力なども注目すべきでしょう。毎年脱原発の提案をシャンシャンで否決してしまうのが恒例の電力会社の株主総会ですが、今年も脱原発など毛頭やる考えのない電力各社は関西電力をボスとする電気事業連合会の結束のもと、すべて否決する構えのようです。しかし、そんな硬直した電力側とは裏腹に今までと決定的に違うのは脱原発提案をする側です。

すなわち、その特徴とは各電力会社の大株主に名を連ねる地方自治体が脱原発派の個人株主等に加わって様々な脱原発提案を経営陣に突きつけることです。東電に対しては大株主である東京都の猪瀬副知事が脱原発提案を出していますし、関電に対しては8.9%を保有する大阪市の橋下市長が保有する原発十一基の速やかな廃止や再生可能エネルギーの導入、発送電分離に取り組む定款変更などを突き付けて、「原発は、もはや利益を得られるものではなくなった。今後どうするのかを考えるのがトップの責任だ」と主張、自ら出席して脱原発への転換を経営陣に迫る予定だそうです。

従来からの脱原発派による株主提案だけでなく、大株主である地方自治体が加わって経営陣に脱原発を迫っているのは、3/11のフクイチがもたらした地方の危機感の表れであり、それらは即地方の住民、そして日本国民の多くが感じている原発の危険性と電力会社の経営陣に対する不安と不信の現れです。これほど様変わりした脱原発提案に対して経営陣が真摯に提案を経営に反映させることなくして公益企業としての電力会社の責任を果たしていることにはならないのは自明です。提案の中には脱原発に結びつくからと言って真っ向から否定するのではなく、経営としてしっかり議論して取り組むべき課題も多くあるはずです。

いったいいつまで頑なに原発にしがみつこうと考えているのでしょうか?原発もろとも経営破たんするまでわからないのでしょうか?こんなことでは利権の塊の原発でふくれあがった悪魔のように聳え立つ関電をはじめとする電力会社の塔が崩れ落ちるのは時間の問題です。経営者の姿勢が問われています。
  



2012年05月23日

【少し明るい話】

原子力に関してはお先真っ暗の話ばかりですが、少しは光も見えてきています。

『経済産業省の電力システム改革専門委員会(委員長=伊藤元重・東大教授)は18日、家庭向けの電力小売り事業への新規参入を認め、全面自由化することで一致した。同時に家庭向け料金規制を撤廃することも確認。実現すれば、一般家庭も電力購入の選択肢が増え、電気料金の引き下げにつながるものと期待される。ただ、新規参入が進まないまま料金規制を撤廃すれば、逆に電気料金値上げにつながりかねないため、一定の移行期間を設けるべきだとの意見も出された。

 電力小売りの自由化は現在、契約電力50キロワット以上の事業所まで拡大され、特定規模電気事業者(PPS)の参入が認められているが、一般家庭は各地域の大手電力会社しか選べない。自由化が実現すれば家庭も電力会社を選べるようになり、再生可能エネルギーで発電した電気が新たな市場になる可能性もある。

 一方、全面自由化した場合に、電気の供給責任を誰が負うかも議論になり、大手電力会社が全面的に負っている現状を見直し、いずれかの事業者に供給責任を負わせることで一致した。その場合、離島など電力供給コストがかさむ地域に電力を供給する場合、コストを誰が負うかについては議論が分かれた。

 政府は早ければ来年の通常国会に電気事業法改正案を提出する見通し。【丸山進】』(5月18日付毎日新聞)


【自由化のリスクを取れ!】

今の日本の電力を巡る状況は地域独占に守られた電力業界の横暴の前に、受け手である消費者・国民はなす術がないという悲惨極まりない状況です。戦後復興のために産業のコメとして鉄と同じくらい重要だった電力に地域独占と総括原価方式という価格決定のメカニズムを与えたのは、ある意味その当時の日本の悲惨な状況を考えれば「英断」だったのかも知れません。

しかしながら、その後当時では未来につながるエネルギーと考えられた原子力発電の導入が電力業界の地域独占や価格独占の体制とつながり、その背後に原子力にかかわる産業界や学界、利権をむさぼる政治家などが群がるに及んで、戦前と同じような原子力「翼賛体制」が出来上がってからは戦後の官僚と政治家による「英断」が逆に原子力と電力の暴走を招くことになってしまったのではないでしょうか。

その結果が、自然を甘く見た東京電力福島第一原発の取り返しのつかない核惨事です。

こういう事故を二度と起こさないためには、巨大リスクに対処する社会システムがなく、さらには地震多発国日本では原発は廃止するしかありません。それと同時に安全で安定的な電力供給体制を築くために、電力業界と原子力発電の切り離し、そして電力の自由化が急務だと僕は思います。

そういう意味で今回の電力システム改革専門委員会の結論は傾聴に値するのではないでしょうか。みなさんはどう思われますか?
  



2012年04月01日

「フクシマ・アーカイブ」21日目。1年前の4月1日の報道で、東京電力の株価が連日ストップ安を繰り返し、とうとう上場来の安値である393円に近付いたと伝えていました。その時点で東電の株式時価総額は2011年3月10日の約3兆5千億円から7千4百億円に暴落しました。
1年後の今、東電の実質国有化が現実のものとなり、株価は208円ほどとなっています。破たんはしていないので株券は紙くずにはなっていませんが、原発事故というものが電力会社にとっていかにリスクが高いかが企業価値を計る株価でも明確にわかります。


電力は今日々の暮らしに欠かせません。でも考えてみればたかが電力です。電力のために、一度事故を起こしたら悪魔のように暴れまわる放射性物質を鎮めるのは至難の技で企業の存立まで脅かすようなとてつもないリスクになぜ電力会社という一私企業が向き合わなければならないのでしょうか。

東電は言うに及ばず他の電力会社の経営陣も今一度しっかりと考え抜く必要があると思います。目の前の赤字に目がくらんで、本気で原発の安全対策を施すこともしないならば、国民も市場もそんな電力会社の傲慢にもリスクにもはっきりと「NO」を突き付けるときがくるでしょう。


以下は、2011年4月1日の僕のブログ記事です。

【連日ストップ安】

東電が市場でも奈落の底に落ちています。

『東日本巨大地震で原発事故を起こした東京電力に対する市場の評価が厳しさを増している。

 株価は連日ストップ安を繰り返し、社債の利回りも上昇(価格は下落)している。被災者への損害賠償額の規模が不透明で、東電の経営の先行きが見通せないことが原因だ。

 ◇ストップ安

 30日の東京株式市場で、東京電力株(東証1部)は値幅制限の下限となる前日比100円安の466円まで売られ、3日連続のストップ安で取引を終えた。株価の500円割れは1962年12月28日(499円)以来、約48年ぶり。東日本巨大地震の前日の10日には終値で2153円あった株価は、わずか約3週間で旧商法時代の額面価格である500円も下回って下落し、1951年に付けた上場来安値(393円)に近づいている。

 この結果、東電の株式時価総額は、10日時点の3兆4599億円から、30日は7488億円まで縮小。企業価値が8割近く失われた計算だ。』(3月30日付読売新聞)


【原発の怖さ】

今回の福島第一原発の事故は、「想定外」の地震と津波が直接の引き金だったとはいえ、原発周辺に住む方々はもちろん、近隣県、首都圏、さらには日本全国、世界まで放射能の恐怖をまき散らし続けています。それだけではありません。当然のことではありますが、電力会社の存在そのものを脅かし続けています。東電は今企業価値はなくなり、存続そのものが風前の灯です。

電力は今日々の暮らしに欠かせません。でも考えてみればたかが電力です。電力のために、一度事故を起こしたら悪魔のように暴れまわる放射性物質を鎮めるのは至難の技で、企業の存立まで脅かすようなとてつもないリスクになぜ電力会社という一私企業が向き合わなければならないのでしょうか。

東電は言うに及ばず他の電力会社の経営陣も今一度しっかりと考え抜く必要があると思います。ただ、国策だからと推進してきた原子力発電を経営のリスクという観点から見直し、国と真剣にリスクの取り方について議論すべきでしょう。

これほどの大災害が原発で起こった以上、今後政府や電力会社がいくら声高に「地球温暖化のために」「クリーンなエネルギー」として原発を増やしましょうと叫んでも、このとてつもないリスクを担保するには莫大な保険・再保険が必要となって、経済原理からますます外れ、事実上市場から原発そのものが締め出される可能性が高まっています。当然の帰結でしょう。現代資本主義社会では経済原理が社会の最も基本的な行動原理なのですから。アメリカで原発建設がなかなか進まない最大の原因は、この市場原理にあります。日本では東電が今回その最初のケースになったと思います。
  



2012年02月14日

【東電と枝野経産相】

枝野経産相は東電に対して議決権比率の半分以上を渡すよう厳しい要求を突き付けたそうです。

『枝野経済産業相は13日、東京電力の西沢俊夫社長と会談し、政府が東電に出資する条件に「十分な議決権」を挙げ、国が東電の議決権比率の少なくとも過半数を取得し、実質国有化したい意向を示した。

 これに対し西沢社長は同日の記者会見で「民間(企業としての)活力の発揮が大事だ」と応じ、経営の独立を守る考えを示した。東電に対する国の関与を巡り、経産省と東電の対立が表面化した。

 枝野氏は具体的な議決権比率には言及しなかったが、東電が3月に策定する総合特別事業計画を認定する条件に「十分な議決権」を挙げ、東電が昨年末に申請した6894億円の追加支援を認定した。西沢氏の発言は枝野氏の意向に反対するもので、政府の原子力損害賠償支援機構が持つ議決権を2分の1未満に抑えたい意向を示唆した。』(2月13日付読売新聞)


【本来は破たん処理】

一体、東京電力は国民の税金でもって救済されることにどれほどの責任を感じているのでしょうか?西沢社長をはじめとする経営陣はつゆほどの責任も感じてないでしょう。その証拠のひとつが議決権を巡る枝野大臣との確執です。

西沢社長の「民間(企業としての)活力の発揮が大事だ」という発言。ちゃんちゃらおかしいでしょう。一体そんな活力があるのなら、福島第一原発の核惨事を回避することだってできたはずだし、発送電の分離を率先して実行して自ら電力の競争原理を活かすような経営をやってきたはずです。しかし、すべては今まで正反対のことをやってきた。電力の独占を進めるために政治家を取り込み、膨大な広告宣伝費でメディアを操ってきたのはどこの誰だったのでしょうか?こんな企業が「民間の活力が大事」などと発言すること自体、笑止千万でしょう。

こんな企業は福島原発事故後すみやかに破たん処理させるべきだったのです。

【原子力ムラを切り崩せ】

それにしても経団連の米倉会長は、枝野幸男経済産業相が東京電力を実質国有化する意向を示していることに関して「国有化とはとんでもない。勘違いしている」と痛烈に批判するなど、相変わらず東電擁護の発言を続けています。

枝野大臣の真意はわかりませんが、妖怪のようにうごめく東電の経営に国が関与していくことで、少なくとも東電の一時国有化の次には発送電分離に道筋をつけて、電力の自由化→電力の競争力回復→電気料金の値下げといった動きにつなげる可能性は出てくるのではないでしょうか。

ただ、東電と枝野大臣の攻防がメディアで伝えられる中、このどさくさにまぎれるかのように原子力安全・保安院は、関西電力が提出した大飯原発3、4号機の再稼働に必要な安全評価(ストレステスト)について「妥当」とする審査結果をとりまとめ、内閣府原子力安全委員会に報告したとの報道がありました。まるで東電に国民の関心を引き付けながら、原発の再稼働を拙速に進めているように見えます。

とにかく、原子力ムラというのは巨大な妖怪のようなものであり、僕たち市民は油断することなく、ひとつひとつの動きを注意深く監視し続けることが必要です。  



2012年01月26日

【火力の分離】

東電から火力発電所を分離することが検討されているそうです。

『政府が、東京電力<9501.T>の老朽化した火力発電所の分離を検討していることが分かった。外部に売却するか、発電所ごとに特別目的会社(SPC)を設立して他企業からの出資を募って高効率の設備に更新するのが狙い。

3月に策定する総合特別事業計画にこうした方針を盛り込む見通し。複数の関係筋が23日、明らかにした。

売却やSPC化の対象となる火力発電所は確定していないが、横須賀火力(神奈川県横須賀市、出力227万キロワット)、五井火力(千葉県市原市、188万キロワット)、南横浜火力(横浜市、115万キロワット)、大井火力(東京都品川区、105万キロワット)などが含まれるとみられ、今後、対象が増える可能性もある。

横須賀など4地点は、設備の大半が昭和40年代(1965─74年)かそれ以前に運転開始したもので発電効率が低い。ただ、早期の原子力発電所の運転再開を見込むのが困難な中で、電気料金の値上げ幅を抑制するために東電は火力発電の燃料費を少しでも低減する必要性に迫られている。

具体的には、古い火力設備を高効率のコンバインドサイクル発電(ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた方式)に切り替えていくことが有効だが、東電には社債発行など資金調達手段が閉ざされているため、設備更新に必要な資金が確保できない状態だ。このため、老朽設備は他社に売却するか、SPC化することで「東電全体の財務状態と遮断する」(政府関係者)ことによって、外部から設備更新のための投資資金を導入しやすくする。』(1月23日付ロイター通信)


【電力自由化につなげよ】

この記事を読むと、福島第一原発がもたらした核惨事の後始末に喘ぐ東京電力と政府にとって、国民の信頼を回復する道は結局のところ、経済原理に則って電力を自由化し、世界的にも出来るだけ効率的で価格競争力のある電気を作るしかないのではないかと思います。

そうするために老朽化した火力発電所の設備を更新し、高効率のコンバインドサイクル発電に切り替えるということは有力な選択肢になりうるでしょう。ただ、それでも、東電からの火力発電所の分離は電力自由化、さらには原発事故を起こした東電と政府に対する国民の信頼回復のための初めの一歩でしかありません。それだけでは国民の信頼回復の道は遠いし、競争力のある電力への道のりになるかどうかはまだまだ不透明です。やはり、史上最悪の原発事故を起こした以上、政府は原発をどうするかについて明確なビジョンを早急に国民の前に示して、国民・国家的に本当に安全・安心で経済的にも合理性のある電力、さらにはエネルギー戦略というものを国民に嘘をつくことなく透明な議論を経たうえで公開するべきだと思います。
そういう意味で、未だに今回の火力発電分離検討を機に、これからは本丸である原発の取り扱いについて公開された議論を期待したいところです。  



2012年01月25日

【パックマン中国】

中国の台頭に西欧が警戒感を強めているようです。2011年12月19日付のタイム誌の記事「ヨーロッパを食べつくす」("Feasting on Europe" by Vivienne Walt, p.45-48, TIME magazine issued on Dec.19,2011)に中国が財政危機で喘ぐ欧州諸国のインフラから有力企業まであらゆる富に食指をのばしていることに警戒感を強めていると書かれていました。果たして、中国はどこまで西欧を凌いでいけるのでしょうか?

As the euro-zone crisis deepens, China is angling for the union's most prized firms

「ユーロ危機の深刻化の中、中国がEUの優良企業を狙っています」

【危機に乗じて?】

EUが戦々恐々とする気持ちもわからないではありません。オーロラの幻想的な景色が楽しめるアイスランドの小さな町Grimsstadir。昨年ここに中国のZhongkun Investment Groupが2億ドルで巨大な観光リゾートを建設するという計画が持ち上がり、その計画を巡ってアイスランド中が喧々諤々の論争となり、中国の狙いは単なるリゾート開発だけではなく、北極に近いこの地の利を生かして国家的な資源戦略の一環として狙っているのではないかという懸念まで出てきたというのです。

もちろんアイスランドのリゾート開発だけではありません。今、欧州では中国の買収旋風が吹き荒れています。スウェーデンの自動車会社Saabの買収(1億41千万ドル)、ハンガリーの化学会社BorsodChen買収(16億ドル)、ノルウェーのシリコン素材会社買収(20億ドル)をはじめ、インフラから優良企業までその買収対象は多岐にわたっているのです。

それもそのはず、今中国は比較的好調な経済を背景に国家としては2兆ドルもの外貨準備高を蓄積、投資グループや民間企業も活発に世界各国で買収案件を競い合うように狙っているのです。さらには以前は経営状態の悪くなった企業買収が主だったのが、最近は欧米の優良企業やイタリアの国営石油会社ENIやエネルギー会社Enelなど国家戦略とも密接につながるような企業買収にまで手を広げているのです。

実際、欧州での中国の直接投資額は、2010年には2009年の倍となり、2011年の最初の半年で5年前の投資額13億ドルを超えて現在も増え続けているとのことです。

【リスクの逆転現象】

2010年5月24日のタイム誌の記事「リスクの逆転」("Risk Inverse" p.16, TIME issued on May 24, 2010)で指摘されていたように、かつてはカントリーリスクが高くて資本逃避がたびたび起こっていた発展途上国がここ10年ほどで力をつける一方で、欧米や日本などの先進国は人口の高齢化や産業の空洞化などの問題が次第に顕在化し、ついにはギリシャやイタリアなどでは財政危機から国債の大幅な格下げという事態まで招来するようになって、発展途上国と先進国のリスクの逆転現象がここにきて顕著になってきているのです。

その最も端的な例として「今そこにある危機」が欧州であり、それを救う側に立っているのが中国というわけです。しかし、物事はそう単純ではありません。かつては日本が資本大国として世界中を買収するのではないかと恐れられたように、今中国が異質の国として警戒されているのです。

中国だけでなく、インドやアラブの国々、中南米の国々がアメリカや欧州の先進国にとって代わる時代はどんな世の中になるのでしょうか?興味津津ですが、大動乱の時代も予感されますね。みなさんはどう思われますか?
  



2011年12月28日

【電力改革始動?】

政府が発送電分離も含めた電力制度改革を始めるとの報道がありました。

『政府は電力制度の改革に向けて本格的な検討を始める。

 電力会社が発電と送配電を一体運用している現在の体制を見直す。

 新規事業者の参入を促し、企業や家庭が電気の調達先や料金を柔軟に選択できる体制作りも検討する。経済産業省が年明けから本格的な検討に入り、2013年度に電気事業法の改正を目指す。

 枝野経済産業相が27日に開く関係閣僚会議で制度改革に向けた論点整理を示す。

 政府は東日本大震災の発生による電力の供給不足に対し、計画停電や電力使用制限による需要の抑制に頼らざるを得なかった。このため、政府は供給面の改革が欠かせないと判断。電力会社間の連携を強化するほか、新規参入を促す手法を検討する。

 電力会社が発電と送配電部門を一体運用している現行制度を巡っては、送配電部門を電力会社から完全に切り離す「所有分離」のほか、電力会社内で送配電部門の会計処理を分離して独立性を高めるなど4案を軸に検討を進める方向だ。』(12月26日付読売新聞)


【市民の監視が重要】

こういう大手メディアの観測記事には注意が必要です。なぜなら、こういう記事は往々にして官僚側から世論の動向を見るために書かれていることが多いからです。経産省や電力会社などからなる原子力ムラが、そう簡単には原子力推進から撤退することはないと考えれば、彼らが電力会社の地域独占を崩し、原発の後退につながるような電力改革を真正面から本気でやるのかどうか常に疑ってかかる必要があります。

この記事が出る前の23日、時事通信は、『菅直人前首相が22日、民主党のエネルギー・プロジェクトチーム(PT、大畠章宏座長)の会合に出席し、再生エネルギー促進のため、東京電力など主要9社による電力供給体制を抜本的に改め、発送電分離を進めるべきだとの考えを示し、「9電力は全部『お山の大将』で、居心地がいい」と批判し、「地域独占かつ発電・送電・配電一体型は根本から変えるべきだ。スペインとドイツは何年か前に完全に踏み切ったが、失敗したとは聞かない」と強調した。』と伝えていました。菅氏が言うとおり、電力の地域独占を解体し、発送電分離を進めなければ、市民にとっては危険でも電力会社にとっては儲かって仕方がない原発への依存体制は改まらないでしょう。

これから政府内部の議論がまともに行われるようにするために、私たち市民がしっかり監視することが必要です。  



2011年08月08日

【格下げ発表】

S&Pが米国債の格下げを発表しました。

『米格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)は5日、米国の長期信用格付けを最上級の「AAA」から「AAプラス」に1段階引き下げた。

 S&Pは格下げについて、財政赤字削減計画が米国の債務の安定化には不十分との見方を反映したと説明した。

 S&Pは、米国の新たな格付けの見通しを「ネガティブ」としており、今後1年から1年半の間にさらなる格下げが行われる可能性もある。

 これまで世界で最も安全な投資先とされてきた米国債の格付けは、今回の引き下げによって英国やドイツ、フランスやカナダなどの国債の格付けを下回ることになる。』(8月6日付ロイター通信)

【マーケットの混乱必至】

米国議会での債務上限法案がなんとか可決され、マーケットに安ど感が漂ったのもつかの間、先週から米国株式市場を震源に世界に飛び火していた金融市場の動揺が、今回のS&Pの米国債格下げの一報でさらに大きくなりそうな雲行きです。

すでに格下げ発表のあった週末にかけて先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁は電話での緊急会議を開催したとの報が世界中を駆け巡っています。もちろん狙いは、米国債格下げや欧州債務危機を受けて金融市場に波及した信用不安を沈静化することであり、日曜日の時点では本日8日早朝に改めて電話会議を行う方向で調整を進めているとのことでした。

本日、日本の午前中は米国では前日の夜中にあたります。すわなち、東京市場は最初に今回の米国債格下げのニュースをどう消化していくか世界が固唾を呑んで見守ることになることを意味します。

米国債は世界で最も安全な資産のひとつとして世界中の機関投資家が保有しているばかりか、様々な金融取引の担保としても大量に使われています。国としての保有高が多い中国や日本の政府もマーケットの動きを神経質にウォッチすることになるでしょう。

果たしてこの一週間はとてつもないマーケットの暴落を経験するのか、それともG7の努力によって金融市場の混乱が回避されるのか、不謹慎かもしれませんが、心臓がドキドキするようなドラマが起こりそうです。  



2011年06月30日

【株主総会対策】

電力会社の株主総会の行方が注目される中、中部電力の総会アドバイザリーがいい助言をしています。

『中部電力が28日に開く株主総会に向け、投資家向け議決権行使助言会社「日本プロクシーガバナンス研究所(JPG)」が脱原発や中電浜岡原発(静岡県御前崎市)の廃炉を求める株主提案に賛成すべきだとの助言を初めてまとめたことが分かった。JPGの吉岡洋二所長は理由について東京電力福島第1原発事故を踏まえ、「民間企業が行うには原発事業はリスクが大きすぎる」と説明している。

 JPGは、株主総会の議案を調査・分析し、顧客の機関投資家に対し保有株式の議決権行使について助言している。中電の株主総会で賛成するよう株主に助言した議案は、▽浜岡原発の廃炉▽巨大地震の予想震源域に原発を設置しないことを定款に明記--など計4件。脱原発を求める個人株主ら93人が提案する見通しだ。

 これに対し、中電の取締役会は「原発は電力の安定供給と地球温暖化対策のため必要不可欠だ」として、株主の全提案に反対する方針。定款の変更を伴う議案の可決には、出席株主の3分の2以上の賛成が必要なため、可決のハードルは高い。』(6月28日付毎日新聞)

【脱原発否決】

結局、28日に開催された中部電力や東京電力、九州電力などの大手電力会社の株主総会は過去最長の審議時間ではありましたが、次々と提出された脱原発提案は、すべて否決されました。しかしながら、だからといって原発による発電が株主の信任を得られたと電力会社が結論付けるとしたらそれは電力会社の都合のいい解釈だと思います。

そもそも過去最長とはいえ数時間程度の株主総会での質疑応答だけで原発の安全性などについて真に納得のいく説明など困難でしょうし、当日出席していない多くの株主も電力会社の原発による発電の経営に対する巨大なリスクについてこのままでいいと納得しているわけではないと思います。

この記事にあるアドバイザリー会社は中部電力に対して、東京電力福島第1原発事故を踏まえ、「民間企業が行うには原発事業はリスクが大きすぎる」と説明しているそうですが、これは当然すぎるほどのアドバイスだと思います。中部電力だけでなく、日本全国の電力会社は原発に反対する株主提案を否決したことに安どするよりも、実質経営破たんと同じ状態にある東京電力の惨状を見て原発事業の抱える経営上のリスクを本気で検討するべきではないでしょうか。

国家の政策だからといって逃げるのではなく、巨大なリスクに立ち向かうためには国家に注文をつけるくらい民間企業としての経営力を発揮すべきでしょう。みなさんはどう思われますか?  


2011年04月01日

【連日ストップ安】

東電が市場でも奈落の底に落ちています。

『東日本巨大地震で原発事故を起こした東京電力に対する市場の評価が厳しさを増している。

 株価は連日ストップ安を繰り返し、社債の利回りも上昇(価格は下落)している。被災者への損害賠償額の規模が不透明で、東電の経営の先行きが見通せないことが原因だ。

 ◇ストップ安

 30日の東京株式市場で、東京電力株(東証1部)は値幅制限の下限となる前日比100円安の466円まで売られ、3日連続のストップ安で取引を終えた。株価の500円割れは1962年12月28日(499円)以来、約48年ぶり。東日本巨大地震の前日の10日には終値で2153円あった株価は、わずか約3週間で旧商法時代の額面価格である500円も下回って下落し、1951年に付けた上場来安値(393円)に近づいている。

 この結果、東電の株式時価総額は、10日時点の3兆4599億円から、30日は7488億円まで縮小。企業価値が8割近く失われた計算だ。』(3月30日付読売新聞)


【原発の怖さ】

今回の福島第一原発の事故は、「想定外」の地震と津波が直接の引き金だったとはいえ、原発周辺に住む方々はもちろん、近隣県、首都圏、さらには日本全国、世界まで放射能の恐怖をまき散らし続けています。それだけではありません。当然のことではありますが、電力会社の存在そのものを脅かし続けています。東電は今企業価値はなくなり、存続そのものが風前の灯です。

電力は今日々の暮らしに欠かせません。でも考えてみればたかが電力です。電力のために、一度事故を起こしたら悪魔のように暴れまわる放射性物質を鎮めるのは至難の技で、企業の存立まで脅かすようなとてつもないリスクになぜ電力会社という一私企業が向き合わなければならないのでしょうか。

東電は言うに及ばず他の電力会社の経営陣も今一度しっかりと考え抜く必要があると思います。ただ、国策だからと推進してきた原子力発電を経営のリスクという観点から見直し、国と真剣にリスクの取り方について議論すべきでしょう。

これほどの大災害が原発で起こった以上、今後政府や電力会社がいくら声高に「地球温暖化のために」「クリーンなエネルギー」として原発を増やしましょうと叫んでも、このとてつもないリスクを担保するには莫大な保険・再保険が必要となって、経済原理からますます外れ、事実上市場から原発そのものが締め出される可能性が高まっています。当然の帰結でしょう。現代資本主義社会では経済原理が社会の最も基本的な行動原理なのですから。アメリカで原発建設がなかなか進まない最大の原因は、この市場原理にあります。日本では東電が今回その最初のケースになったと思います。
  



2011年02月16日

【「林原」って?】

始めて耳にする企業名ですが、負債総額1千億円の破たんのインパクトは相当なもののようです。

『万一、全国の店頭から菓子や冷凍食品、さらには医薬品や化粧品などが消えたら、市場がパニックとなるかもしれない。そんな悪夢が脳裏をよぎる深刻な事態が起きた。

 バイオ関連企業の「林原」(本社・岡山市)が会社更生法の適用を東京地裁に申請したからだ。これは単なる地方の有力企業の倒産とは次元が異なる。

■甘味料などに使われるトレハロースの世界生産をほぼ独占

 林原は甘味料などに使われる糖質「トレハロース」や抗がん剤「インターフェロン」を量産する世界的なメーカーで、トレハロースの世界生産をほぼ独占しているのだ。トレハロースの取引先は全国で約7000社、製品は約2万品目にのぼるうえ、「他の代替がほぼ不可能」というだけに、食品業界などへの影響が懸念されている。

 トレハロースは、同社によると「食品の乾燥や傷みを抑えたり、うま味を引き出したりするなど数多くの特長をもつ」という。クッキーなど菓子類の甘味料としてだけでなく、冷凍食品の劣化低減、野菜ジュースの苦味抑制などに役立っている。さらには保水性に優れることから、機能性繊維や医薬品、化粧品などにも素材として幅広く使われているという。

 菓子メーカーでは江崎グリコ、繊維メーカーではシキボウ、化粧品では常盤薬品工業、富士フイルムなどが林原のトレハロースを使用している。いずれも「当面の在庫は確保している」としているが、万一、林原の供給がストップするような事態となれば、各社の生産に影響が出るのは必至だ。

■美術館、自然科学博物館の運営、恐竜の発掘調査なども展開

 地方のバイオ関連企業が、これだけ多分野に波及する素材を独占的に生産していること自体が驚きだが、これが現実なのだ。林原は1883年に水飴製造からスタートし、「他社がやらない、他社ではできない独自のテーマで研究を行う研究開発型企業として歩んできた」(同社)という。

 しかし、今回は独自性の強い企業文化が裏目に出たようだ。帝国データバンクなどによると、林原はトレハロースやインターフェロンを量産することで、バイオテクノロジー企業として認知度を高めたが、運輸・倉庫業、ホテル経営、飲食業など事業の多角化を推進。美術館、自然科学博物館の運営、恐竜の発掘調査などメセナ活動も展開したため、「研究開発投資と不動産投資などで、年間売上高を大きく上回る借入金が経営を圧迫していた」という。

■中国銀行自身の審査態勢が問題となる可能性

 非上場の同族企業である林原は、経営面で外部のチェック機能が働かなかったため、長年にわたり粉飾決算を続けていたことが判明したほか、オーナー一族へ違法配当が行われていた疑いも浮上。捜査当局も一連の不正に関心を示しており、刑事事件に発展する可能性もある。

 林原のメインバンクは地元・岡山の中国銀行で、林原が同行の筆頭株主となるなど、「両社は持ちつ持たれつの関係」(地元関係者)だった。中国銀行は、つなぎ融資を林原に行うとしているが、長年にわたる粉飾決算が判明したことで、中国銀行自身の審査態勢が問題となる可能性もある。中国銀行以外の取引金融機関は林原への不信感を高めている。林原は「会社更生手続は事業継続を目的としており、商品の安定供給は確保できると考えている」としているが、果たして甘味料など素材の供給が順調に進むのか。林原の再建問題からは目が離せない。』(2月11日付J-CASTニュース )


【事業の多角化がアダ?】

「林原」、「トレハロース」や「インターフェロン」といった呼び名はあまり素人には馴染みがないのですが、この記事を見ると僕たちの日常生活にも密接に関わっていて、林原が完全になくなってしまうと大変なことだというのがよくわかります。まさに昨年あった中国のレアアース事件に匹敵するような経済事件であり、林原が生産する製品はレアアースのような希少価値があり、世界中への影響が懸念される事態なのです。

正直、記事を読んで初めて知り驚きました。

この「林原」という企業のホームページを見ると、その事業の多角化、高度な技術力、グローバル性に目を見張ります。

「林原」のホームページ→ http://www.hayashibara.co.jp/index.php?page=top

林原が世界生産をほぼ独占している甘味料などに使われる糖質「トレハロース」の取引先が全国で約7000社、製品は約2万品目にのぼるというのもうなづけます。

非上場の同族企業ゆえのチェック機能の弱さが多角化した事業の暴走を招いたのでしょうが、記事の通りメインバンクの責任も今後問われることになるでしょう。ただ、生産停止などによる世界的な影響が懸念されるだけに更生法適用後の動向にも注目したいところです。  



2011年01月28日

【市場からの警告】

日本国に市場が警告を発しています。

『米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は27日、日本国債の長期格付けを従来の「AA」から「AAマイナス」に1段階引き下げたと発表した。財政の悪化懸念を理由に挙げた。同社による日本国債の格下げは2002年4月以来8年9カ月ぶり。
 上から4番目のAAマイナスは信用力には問題ないとされるが、財政不安が取り沙汰されるスペインを下回る。財政再建の行方によっては、国内の長期金利に上昇圧力がかかり、景気回復の足を引っ張る危惧がある。
 S&Pは「日本の財政赤字が今後数年にわたって高止まりし、財政の柔軟性がさらに低下する」と予想。大規模な財政再建策が実施されない限り、「20年より前に基礎的財政収支の均衡は達成できない」とし、20年度の黒字化を目指す政府目標の実現は困難との見方を示した。
 また、菅直人首相率いる民主党政権の政策運営を「債務問題に対する一貫した戦略が欠けている」と批判。首相が優先課題に掲げる消費税を含めた税制と社会保障制度の一体改革をめぐっても、「これにより、政府の支払い能力が大幅に改善する可能性は低い」とし、財政再建への貢献に強い疑問を呈した。』 (1月27日付時事通信)


【危機は突然やってくる】

2001年には日本国債の格付はトリプルAでしたからこの10年でAAマイナスまで落ちて財政不安が取りざたされるスペインよりも下になったというのはそのスピードと深刻さは重大です。

菅首相はこの格下げ報道に対して、「今初めて聞いた。(衆院)本会議から今出てきたばかりで、ちょっとそういうことに疎いので、改めてにさせてほしい」と首相官邸で記者団に語ったそうですが、それが首相の真意かどうかは別にして、この発言はおそらく今の政治家達の大半の危機意識のなさを代表しているものだと思います。

首相でさえこういう発言が飛び出してくるわけですから、他は推して知るべしでしょう。与謝野氏の変節ぶりを批判する声も多くありますが、日本の危機的な財政状況を見れば、なりふり構わず真正面からこの問題に取り組もうとする姿勢は当然だと思います。

もう「日本国倒産」までのカウントダウンを市場は始めました。マーケットが動き、そこに投資家が「真実」を見出して自らの身の危険を感じた時、もう後戻りはできない怒涛のような動きが始まるでしょう。最近の気候変動や天変地異のかつてない動きの速さ、スケールの大きさと同じような事態にならないように国民も政治家もしっかりと考え行動すべきときだと思います。みなさんはどう思われますか?  




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海や山、自然が好きな九州男児です。あらゆる機会をとらえて、時代の変化をいつも感じていたいと思っています。
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