2011年08月30日

【驚愕の数字再び】

またしても背筋も凍るような数字が今頃になって政府から発表されました。

『政府が、東京電力福島第一原発の1~3号機事故と、一九四五年の広島への原爆投下で、それぞれ大気中に飛散した放射性物質の核種ごとの試算値をまとめ、衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会に提出していたことが分かった。半減期が約三十年と長く、食品や土壌への深刻な汚染を引き起こすセシウム137の放出量を単純比較すると、福島第一原発からの放出量は広島原爆一六八・五個分に相当する。

 福島第一原発事故は今年六月の国際原子力機関(IAEA)閣僚会議に対する日本政府報告書、広島原爆については「原子放射線の影響に関する国連科学委員会二〇〇〇年報告」を基に試算されている。

 セシウム137の放出量は、福島第一原発1~3号機が一万五〇〇〇テラベクレル(テラは一兆)、広島原爆が八九テラベクレル。このほかの主な核種では、福島事故で大量に飛散したヨウ素131(半減期約八日)は、福島が一六万テラベクレル、広島が六万三〇〇〇テラベクレルで、福島は広島原爆約二・五個分。半減期が約二十八年と長く、内部被ばくの原因となるストロンチウム90が、福島が一四〇テラベクレル、広島が五八テラベクレルで、広島原爆約二・四個分となる。

 ただ、政府は特別委に対し、福島事故と広島原爆との比較自体には「原子爆弾は爆風、熱線、中性子線を放出し、大量の殺傷、破壊に至らしめるもの。放射性物質の放出量で単純に比較することは合理的ではない」と否定的な考えを示している。

 試算値は川内博史衆院科学技術・イノベーション推進特別委員長が八月九日の同委員会で「広島型原爆の何発分かを政府として正確に出してほしい」と要求していた。』(8月25日付東京新聞)

【隠ぺいと同じ体質】

それにしても福島第一原発の核惨事そのものを防げなかったことに加えて、その後の放射性物質の大量放出の中、適切な住民避難も迅速適切に行えず多くの住民の方々の被ばくを放置しつづけた政府の責任は重大です。ほとんど国家による犯罪行為とさえ言えると思います。

そして今回の放射性物質の拡散状況のような重大な試算値の事故から5ヶ月も経った時点での発表。なぜこれほどの時間がかかったのか、なぜ今発表なのか、この結果を政府としてどう責任を取るのか、この試算結果を受けて住民への放射線被ばく対策をどうするのかなど、徹底的に検証されなければならないでしょう。さらに言えば今まで嘘をつき続けている国が発表した数値なので原爆168個分というのも過小な推定かも知れないことを付け加えておきます。

【フクシマ事故と原爆】

そしてもうひとつ、今回の発表についてもうひとつ重要なことがあります。それは今回の試算値について、政府は福島事故と広島原爆との比較自体には「原子爆弾は爆風、熱線、中性子線を放出し、大量の殺傷、破壊に至らしめるもの。放射性物質の放出量で単純に比較することは合理的ではない」と否定的な考えを示している点です。事故直後にメディアに何度も出てきて「放射能はただちに健康に影響はありません。」と連呼しつづけた御用学者たちと同様に、原爆とフクシマ事故との単純比較は合理的ではないとわざわざ付け加えることで、あたかもフクシマの放射性物質の放出をそれほど大きな問題ではないような印象を与えようとしているのですが、これはまったく逆だと思います。

全国各地の反原発運動を支援し続け、チェルノブイリの汚染地帯の長年にわたる調査などに携わったきた藤田裕幸さんの最近の著書「もう原発にはだまされない 放射能汚染国家・日本 」(青志社刊)にそのことが端的に書かれているので引用したいと思います。

『「広島にも長崎にも人が住んでいるのだから、福島に人が住めなくなるはずはないじゃないか」という意見があります。そして一方で原爆と原発は違う、原子爆弾は怖いけど原発は大丈夫だと思っている人が多いと思います。

原子爆弾、つまり広島や長崎に落とされたウラン爆弾やプルトニウム爆弾は、核分裂反応したウラン、プルトニウムの量を見ると、爆弾1発につき1キログラム以下、700グラムほどなのです。したがって、そのときに生みだされた死の灰の量も1キログラム未満です。しかも何万度という火の玉の中で発生した死の灰が、キノコ雲と一緒に立ち上って行った成層圏に入り、地球全体の汚染につながりました。それに対して、原子力発電所の炉心には約30トンのウラン燃料が入っています。そしてそのうちの3パーセント、約1トンが死の灰に変わります。ですから、原子力発電所の放射性物質が環境に出ますと、原子爆弾の1000発分の放射性物質が環境に放出されるのです。

原爆が投下された広島、長崎の被災地は、3~5キロの範囲内でほとんどが原爆の炸裂から飛んできた放射線を直に浴びることになりました。大地の汚染というのは、黒い雨が降り死の灰が降り注いだところになるわけです。

チェルノブイリの場合は、爆発して飛び散った核燃料の破片は、その周辺にまき散らされました。そのため、チェルノブイリの被災地は、300キロ~500キロまで拡大しました。広島・長崎が3~5キロと考えれば、原子力発電所の事故がいかに深刻なものかをご理解いただけると思います。』(同書 p.54~56)

福島とチェルノブイリは違うと考える方がおられると思いますが、格納容器そのものが爆発して飛び散らなかったので大勢の人が放射能による急性障害に至るような事態は起きませんでしたが、放射性物質の拡散という点では、福島から200キロから300キロ離れている千葉の牧草や神奈川の茶葉から検出された放射性セシウムが500ベクレルを越えていたということは、チェルノブイリの300キロ圏の汚染地域に近い汚染地域が首都圏にまで広がっていることを忘れてはいけません。これから広範囲に長期にわたって晩発性の放射線による障害が出てくることは確実なのです。

政府はその深刻さを軽んじるような発表をするよりも、出来るだけ深刻に考えて対策を立てる必要があるのではないでしょうか。市民、国民を守らない政府なんてなんのためにあるんでしょうか。


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問題から目をそらし、何事も無かったことにしてしまいがちなメンタリティは日本人の最大の弱点かと思います。起こってしまった事故についての後始末はきちんとやるべきですよね。原爆のような兵器じゃない、チェルノブイリみたいに爆発飛散していないというのは机の上の話で、大変な現実が私たちの前にあるのだから、とにかくこれを何とかしなければ。
それにしても長期間を要する大仕事ですね。
野田さんのちから、期待してます。エネルギー政策についての発言を早く聞きたいです。

luckymentaiさん、いつもパワーあるブログを有難うございます!

Posted by komorebigardenkomorebigarden at 2011年08月30日 09:12

komorebigardenさん、いつもコメントありがとうございます。
野田さんというのは、民主党にとってギリギリセーフの選択として議員に有る程度の良識が働いた結果だと思います。なったばかりなので未だ未知数ですが、とりあえずはしっかりやってもらいたいと思います。
菅首相は党内もまとめきれず、場当たり的に政策を打ち出して何も出来なかった最悪のリーダーだという論評がマスコミなどには多いですが、確かに総括すればそうかもしれません。しかし、少なくとも原発に関しては本人が原子力ムラとは何のしらがみもなかったこともあって今までタブーだったことによく踏み込んだほうだと思います。しかし、あれが日本の政治家としては限界に近かったのかもしれません。官僚も経済界もマスコミもすべて敵に回して市民の安全のためにと孤高の闘いを強いられたのですから。その菅首相が死に物狂いで堰き止めようとした狂った原発政策を果たしてどれだけ野田新首相が考え、脱原発にもっていけるか非常に微妙だという感じがしています。しかしあきらめたら終わりです。

Posted by luckymentai at 2011年08月31日 08:27

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