2007年11月19日

【緊迫化するパキスタン】

パキスタン情勢が急速に緊迫化している。

軍事国家パキスタンに未来はあるか『パキスタン訪問中のネグロポンテ米国務副長官は17日、イスラマバード近郊でムシャラフ大統領ら政権・軍の幹部と会談した。副長官は非常事態の解除などを求めたとみられるが、AFP通信が大統領側近の話として伝えたところでは、大統領は「法と秩序の回復」が前提になるとの従来の説明を繰り返し、早期解除を事実上拒否した。
 ネグロポンテ副長官はこのほか、公正な選挙の実施、陸軍参謀長の兼職解消など一連の民主化プロセスの履行を強く促したもようだ。』(11月17日付時事通信)


一体、ムシャラフ大統領は、この国をどこに持っていこうとしているのだろうか?

【米国の誤算】

11月19日号タイム誌「パキスタンの非常事態宣言」("Pakistan's State of Emergency")と題して、民主主義を否定しようとするムシャラフ大統領への民衆の怒りと米国の苦悩を浮き彫りにしている。

Pervez Musharraf infuriates his people - and embarrasses Washington - by cracking down on democray. Will that help him fight the war on terrorism? Probably not.

すなわち、あの911テロを引き起こしたアル・カーイダの主要メンバー等多くのテロリストが潜伏していると見られているパキスタンは、テロリストとの戦いを進める米国にとって必要不可欠な同盟関係にある国だ。しかし、そのカウンターパートが独裁者であり続けるのも米国にとって不都合だというのがその苦悩の正体なのだ。

ではどうするか?

その解決策としてブッシュ大統領は、亡命していた野党党首で前首相のベーナズィール・ブットー氏(Benazir Bhutto)をパキスタンに呼び戻し、彼女を首相にして民主主義を回復し、ムシャラフ氏は軍参謀長の地位を外れて平民の大統領としてとどまるというシナリオを立てたのだ。

しかし、ここ数週間でそのシナリオは破綻した。10月に再任されたムシャラフ大統領に最高裁が軍参謀長を兼任するのは憲法違反だと対立、大統領は今月非常事態宣言を発動して憲法を停止するとともにブットー氏の政治活動も妨害しているのだ。

【天は自ら助ける者を】

そもそも今のパキスタンは1947年にイギリス領インドから独立し、度重なるインドとの戦争を戦いながら、長い間その強大な軍事力で連邦共和制という国家体制をかろうじて維持してきた国だ。核兵器を保有し、テロとの戦いやイラン、旧ソ連(今のロシア)との対抗上、米国が絶対にはずせないと考えている国でもある。

しかし、長い軍政支配のせいもあり、政党の力は弱い。そんな中で現在の危機的状況を抜け出し安定した国家にするためには、大多数の民衆の支持が最も不可欠だ。

ムシャラフ大統領は、米国の操り人形みたいに動くのではなく、自らの意思で民主国家への道筋を明確に民衆に示して、公正な選挙を一刻も早く実施してほしい。もちろん、そのためにブットー氏の政治活動も再開させるなどの度量も見せて欲しいものだ。

「天は自ら助くる者を助く」 "Where there's a will, there's a way."

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