次は大阪市長―脱原発の動き
【重い提案】
次は大阪市長が「脱原発」を提案するそうです。
『大阪市の平松邦夫市長は17日の定例会見で、20日に会談する関西電力の八木誠社長に対し、「脱原発」を提案する考えを明らかにした。同市は出資比率が9.37%の筆頭株主。「『脱原発を目指し、皆さん力を合わせませんか』と言うべき時だ。こちらの思いを届けるのも株主であり、行政の責任」と話しており、平松市長の発言は、関電の今後の原発を巡る判断に影響を与えそうだ。
平松市長は原発について、「今すぐすべてを止めるべきだと言うつもりはない」としながらも、「安全でクリーンとの神話がもろくも崩れた。核廃棄物、使用済み核燃料をどうやって鎮めるのか。本当に確立された技術があるのかも定かでない」と原発に頼り続けることの危険性を指摘。その上で「火山列島の上に箱だけが頑丈な原発があり、それを冷やす装置もないことを知った。唯一の被爆国として、地球環境や科学技術に大きなメッセージを発すべき時だ」と述べた。
今後、市としても太陽光やごみ焼却排熱を活用したエネルギー供給システムの構築に取り組むという。「次世代エネルギーの開発にシフトするのが政治の役目。国には方向性を早く示してほしい」と語った。
平松市長は20日午前に関電本店を訪れ、八木社長にこうした考えを伝える。また、関電の15%節電要請に関し「市民生活に大きな影響を及ぼす」とし、業種や時間帯に応じた目標数値を示すことも求める方針だ。』(6月17日付毎日新聞)
【流れが変わる】
今回の大阪市長の発言といい、橋下大阪知事の動きといい、はたまた13基もの原発を抱える福井県知事の発言と言い、
大阪そして関西地域では行政が先頭に立って関電に脱原発への方向転換を求めているように見えます。これに産業界が加われば本当に日本は地方から脱原発への流れが加速していくことでしょう。黙ってても新規の原発建設がほぼ困難となっている現状では各地の既存の原発は次々と廃炉になっていき、原発への依存度はどんどん下がって行くでしょう。しかし、それでは次の地震、次の津波、そして自然災害によらない過酷事故が起これば福島以上の事故が日本全体を襲うのに間に合わない可能性が高いのです。
地方の首長や経済界が地域住民の安全を最優先に考えて脱原発に向けて動き出せば、経産省を頂点とする原子力村を変えていくことも可能だと思います。
そういう意味で大阪、関西の動きは本当に頼もしい限りです。
【鈍い九州】
それに比べて脱原発に向けた動きが見えない九州。これは福島第一原発の核惨事が起きた時から僕が懸念していたことが現実になっているからだと思っています。
それは何か?
端的に言うと、九州は福島から千キロ近く離れているために事故が起こったときに福島や関東と危機感を共有しなかったことです。(この点については、3月27日付の僕のブログ記事
「原発事故後に見えてきたもの―福島第一原発」の「3. 福島、首都圏、九州の温度差」で書きました。)
すなわち、僕ら一般人もそうですが、今でも福島や関東に比べると九州においては電力会社も産業界も行政も危機感が薄いのです。危機感というのはもちろん原発に依存することによる過酷事故の可能性であり、電力不足への危機感でもあります。ただ電力不足に関しては、チェルノブイリ事故後、過酷事故への反省もなく安全神話を広めて強引に原発依存を強め、ガスタービン発電や自然エネルギー比率を高めてこなかったツケが今電力会社と政府に回ってきたわけであり、当然のことながらそのツケを国民に回すのではなく自助努力で解決していくべきものです。原発が稼働しないと電力不足になるとか、計画停電だとか言って国民を脅すのは言語道断でしょう。
死に物狂いで住民の安全を守り、且つ電力を安定供給していくのが電力会社、政府、そしてウソをつき続けてきた原子力村の責務です。
原発に依存せざるを得ない地域経済の厳しい現実から、玄海町長は玄海原発の再開を容認、佐賀県知事も容認の方向、玄海原発から50キロしか離れていない福岡市、福岡県の行政も経済界も原発に関してはダンマリを決め込んでいます。川内原発のある鹿児島もその近隣県も同じです。危機感のなさは深刻だと思います。
この危機感の薄さが、地震や津波がなくても福島以上の原発の過酷事故の九州での発生につながって行くのではないかと危惧します。災害というのは思いもかけないところから、思いもかけない時にやってくるのです。そしてそれが原発事故という人災の場合には言い訳しても救いようがありません。言い訳するときにはすでにその土地は放射能にまみれているのですから。
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