何が何でも60年運転-玄海原発の闇
【2033年まで健全?】
「開いた口が塞がらない」とはこんな人たちのことを言うための言葉です。
『九州電力玄海原発1号機(佐賀県、定期検査で停止中)の原子炉圧力容器が予想を上回り劣化していた問題で、経済産業省原子力安全・保安院は27日、現時点の劣化は異常なレベルではなく「2033年までは十分健全」との見解をまとめた。1975年に運転開始した1号機は、2033年まで運転すれば58年となる。政府は原発を原則40年で廃炉とする方針を決めているが、9月に発足予定の原子力規制委員会が再検討することが決まっており、今回の見解は論議に影響を与えそうだ。
【図でみる】原子炉圧力容器と中性子
保安院は昨年11月からこの問題を検討。27日開かれた専門家による意見聴取会で大筋了承を得た。
原子炉圧力容器は、核分裂反応で生じる中性子を浴び続けるともろくなる。劣化の程度を間接的に調べるため、各電力会社は圧力容器内に同じ材質の試験片を設置。定期検査の際に取り出して、劣化の程度を示す「脆性遷移(ぜいせいせんい)温度」などを調べる。この値が異常に高いと、事故の際の注水がきっかけで圧力容器が破損する恐れがある。
九電は玄海1号機について97年までに3回分析。いずれも脆性遷移温度は予測値を下回っていたが、09年の値が約14度上回る98度と、国内の原発で最高値を記録した。想定以上の老朽化を示す結果に、圧力容器の健全性を不安視する声が上がり、保安院が専門家会合で検討してきた。
試験片を電子顕微鏡で詳しく調べたところ異常な劣化は見つからず、現時点では「健全」と判断。圧力容器の内壁は試験片より炉心から遠く、その分浴びる中性子の量が少ないため劣化は遅く、実際に圧力容器の劣化が試験片と同程度になるのは、運転開始から約58年後の2033年ごろになるとした。
議論では、圧力容器の脆性遷移温度が98度になったと仮定しても、理論上は事故の際の注水で容器の破損には至らないとの意見が多数を占めた。
一方、1号機の脆性遷移温度が予測値を大幅に上回った理由は説明がつかないとして、予測に使われる計算式の精度を今後、学会などが詳しく検証するよう求めた。【奥山智己】』(7月27日付毎日新聞)
【保安院の「健全」は電力会社の「健全」】
フクイチ事故のときに住民の安全を確保するどころか、電力会社の「安全」ばかりに重点を置いてきた原子力安全・保安院。あれだけの惨禍を起こしておきながら誰一人として刑務所にも入れられず、反省もせずに新しい規制組織が出来るまでは自分たちが判断して当たり前とうそぶき、今度は井野博満・東大名誉教授(金属材料物性)に言わせれば
「日本一危険な原発」と恐れられている老朽化した玄海原発一号機をして、2033年まで「健全」ですと言い放つ保安院。
誰が彼らの言うことを信じるでしょうか?もしも事故が起きれば日本全国が緊急事態に陥るという危険性が少しでも疑われれば、その原因を先送りすることなく徹底的にわかるまで、しかも迅速に調査するというのが保安院の最低限の仕事ではないでしょうか?
そんなことも無視するようなら全員玄海原発1号機に家族ともども住まわせて自分たちの命をかけて調べてもらいたい。それくらい1号機の脆性遷移温度が予測値を大幅に上回った理由の究明というのは重大なことなのです。
あまりにも安易、あまりにも無責任と言わざるを得ません。市民を馬鹿にするのもほどがあると思います。
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