2010年03月03日

【社長自ら説明】

トヨタの苦悩―問われる危機管理先週のニュースの中で最も注目すべきは、豊田社長の米国下院公聴会での証言だろう。公聴会の冒頭は英語で証言した豊田社長であるが、その後の議員との質疑応答では通訳を介しての発言となった。世界のトップメーカーであるトヨタのトップ自らが自社の今後の命運を左右する場面に世界に向かって語ったことは、自動車業界や日米間の政治的、経済的問題としてだけでなく、グローバルな展開をしている企業の危機管理のあり方など幅広い分野において重要なテストケースとなることは間違いない。そういう視点から少しこのトヨタ問題を考えてみたい。

先ず、豊田社長の公聴会での証言に対する評価に関しては国内でも海外でもふたつに分かれているようだ。
米国世論の代表例として、ワシントン・ポスト紙は、「豊田氏は公聴会での姿勢と謝罪を通じ、(米市民の)怒りを静めたようだ」と証言を評価している。また、ケーブルテレビMSNBCがインターネット上で行った投票によると、豊田社長が公聴会で「誠意を示した」と答えて評価する人は48・6%で、「会社の良き代弁者ではなかった」の42・3%を上回ったと伝えている。

 しかし、ニューヨーク・デイリー・ニューズ紙は、豊田氏が議員の質問に率直に答えていない場面も見られたと指摘。「豊田氏は議員たちを繰り返しいらだたせていた」などと批判的に報じたとのことだ。

僕自身は、豊田社長は公聴会証言を通してその誠実さや人柄が垣間見られ、議会関係者や米国民にそれなりのプラスの印象を与えることが出来たのではないかと見た。昨年証言したGMなどのトップと比べれば、よくやったと言えるのではなかろか。

【なにが問題なのか】

トヨタの苦悩―問われる危機管理しかし、本当の勝負はこれからかもしれない。豊田社長の公聴会証言の前に出されたタイム誌のカバーは「トヨタの混乱」("Toyota's Tangle", TIME issued on February 22, 2010)と題して、何が問題なのかについて特集記事を載せていた。

その記事によれば、昨年11月からのトヨタ車リコール9百万台というのは突然出てきた問題ではなく、10年近くの間に積み上がってきたものだとしている。最初は2002年、トヨタ車のいくつかで見つかったアクセルの急加速事故。このときトヨタはドライバーに責任転嫁するような姿勢だったという。そして、2003年にはNational Highway Traffice Safety Administrationの調査で不具合が報告され、その後2005年、2007年と続く。その最後の局面が昨年11月の3.8百万台のリコールと今年1月の2.3百万台のリコールとなったのだ。

マサチューセッツにある消費者アドバイス組織であるSafety Research & Strategiesによれば、トヨタ車のアクセル急加速例は今までに2262ケースにのぼり、少なくとも1999年以来米国で819の交通事故、26人の死亡が起きているとのことだ。ここまで事態が悪化したことにアメリカ国民が不安を覚えるのはある意味、当然のことだと思われる。しかも、日本では今回アメリカでこの問題が脚光を浴びるまでは、それほど大きな問題として今まで報道されてこなかったし、トヨタがまさかという意識も僕たちの中にあったのではなかろうか。

【事業拡大と成功体験】

しかし、リーマンショックで世界的な不況が各国を襲い、もともと体力がなくなっていたGMやクライスラーは破たん、世界のトップ自動車メーカーとして君臨することになったトヨタも大幅な減産を強いられることになった。それまでひたすら拡大路線を取って成功体験ばかり積み上げてきていたトヨタも大幅な戦略の見直しを迫られることになったのだ。

世界一の技術と性能を誇ってきたトヨタのもうひとつの側面、自社が最高という「思い込み」が事業拡大にばかりに目を奪われ、足元の安全や顧客目線を忘れることにつながったのではないか。

タイム誌には厳しい言葉が続く。「顧客への気配りはなかった」、「トヨタは傲慢な企業文化が有名だった」

"Their focus on the customer has been nonexistent.", "Toyota is famous for having an arrogant culture."

豊田社長はそういう批判に真正面から謝罪し、創業家の名前に恥じないように安全な車づくりに全力を尽くすとアメリカ国民に向かって約束した。その姿勢は真摯に映った。豊田社長は、トヨタに降りかかった最初の試練をなんとか乗り越えたと言っていいかもしれない。しかし、本当にアメリカ国民、いや、トヨタ車の世界の顧客が安心するまでにはまだまだ次の高いハードルが待っていると思われる。これからしばらくはトヨタから目を離せないだろう。


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