2011年04月03日
事故後3週間が経過しましたが、2号機の圧力容器の損傷など事態の重大さは変わっていないようです。

会見した代谷誠治委員はその理由について、「圧力容器内は高温なのに圧力が上がってこない。どこかが損傷している可能性がある」と説明した。
圧力容器は厚さ16センチの鋼鉄製で、核燃料を封じ込めるための最も重要な防護壁と言える。
しかし、2号機では表面の放射線量が1時間当たり1000ミリシーベルト以上の汚染水がタービン建屋やその外で見つかった。これまで、政府や東電は漏えい経路について、「原子炉内で破損した核燃料に触れた水が、何らかの経路で漏れた」とみている。』(3月29日付毎日新聞)
【次々と重大事態】
4月2日にはこの圧力容器が損傷していると見られる2号機の取水口付近のピットから毎時千ミリシーベルトという高濃度の放射能汚染水が海に流出していることもわかりました。

ここ数日の報道ではフランスやアメリカなどの国際支援体制が少しずつ整ってきたこともあり、原子炉の再臨界による爆発→大量の放射性物質の放出という最悪の事態には至っていませんが、それを避けるための作業は一進一退を繰り返しており、依然として予断を許さない状況が続いていると思います。
【次々と出てくる醜悪な事実】
この週末も自分の事故に対する事実認識を確かめようと、本屋に行っていくつかの週刊誌等を読みました。週刊文春や週刊現代などかなりセンセーショナルな記事もありますが、それなりの真実も含まれていると思います。現場に近いところで取材してきたり、各メディアが総力を挙げて調べているので、相当多くの証言や事実が記事の裏付けとなっています。これらメディアの取材力には僕が敵うわけはありませんが、ただ、自分でこの3週間考えてきた事故に対する大きな見方や予測についてはそれほど間違っていなかったし、メディアよりも先にブログで伝えることが出来たと考えています。
週刊誌等の記事の中でいくつか気になったことがありますのでご紹介しておきます。

2. 政府・東電の今までの原発推進のあり方、さらには今回の原発事故対応については、ほとんどのメディアが猛烈な批判をしています。東電、原子力安全保安院、原子力安全委員会、経産省、官邸等どれをとっても硬直化して適切な判断を下せなくなった官僚組織のとてつもなく醜悪な姿が日々メディアで報じられていますので、敢えて個別の事象を取り上げる必要はないと思います。
特に東電に関しては相当厳しい批判がされています。特に原発で命を賭けて闘っている現場の作業員、自衛隊、消防隊等に対するあまりの配慮のなさには驚愕します。具体的にはその方々が宿泊している「Jヴィレッジ」という施設には90室もの宿泊部屋があるにもかかわらず、それらにはカギをかけ、食堂や大講堂に雑魚寝させているというものでした。「指示がないからそうしている」という東電の姿勢には呆れてしまいます。
これから、福島第一原発の核惨事のとりあえずの収束にも年単位、最終的に放射能汚染の心配がなくなるまでには何十年というとてつもない時間がかかることが予想されます。その間にも再臨界に至らなくとも4つの原子炉、使用済核燃料プールから放射能は放出されつづけ、空気と水と土壌の汚染、そして食物連鎖を通じて生物の体内に蓄積される放射性物質の危険は継続・拡大していくことになるでしょう。これからはそれらの汚染について長期的な監視が必要になってきますし、それらの監視結果が適切に市民に公開されるかどうかについて市民が監視していく必要があります。ただ、今の段階では、もうただ少しでも被害が小さく収まることを祈るのみです。
今後はこの福島第一原発の核惨事を巡るレポートは回数を減らしていこうと考えています。人間は緊張状態を持続するのには限界があるものです。これからは元の元気が出るニュースを少しずつ増やしていきたいと思っています。
≪追記≫
今朝、図書館から借りてきた「原子力発電で本当に私たちが知りたい120の基礎知識」(広瀬隆、藤田裕幸著、東京書籍 2000年11月18日発行)を読んでいたらスリーマイル島原発事故の記述の中に興味深い個所(p.257)を見つけました。
スリーマイル島原発はニューヨーク州に近いペンシルバニア州にあったため、事故が発生した1979年3月28日以降、原子炉が爆発するのではないかという懸念でニューヨーク、首都ワシントンも大パニックに陥ったものの、「結果的には、NRC(原子力規制委員会)が原子力の専門家を集めて内部解析を進め、水素爆発を防ぐために膨大な計算を迅速に成し遂げ、危機一髪で爆発を食い止めた。日本であれば、NRCのような高度解析は不可能で、爆発したと言われている。」
この本が書かれたのは10年ほど前ですが、スリーマイル島原発事故から30年あまりたった今、福島第一原発事故ではまさにこの記述どおり、原子力安全委員会も原子力安全保安院も政府全体も東電もNRCのような高度解析など出来ず、慌てふためいて水素爆発を招いてしまったのです。米国はこの事故の後も原子力発電所の事故や核戦争に備えて着々と危機対応能力を高め、今回の日本での核惨事に対しても迅速で大規模な有事即応体制を取りました。その後のメディアに出てくる御用学者や原子力関係の指導層の見解などを聞いても一体この人たちは今まで何をしていたのだろうかと不信感ばかりが募ります。日本とアメリカ、なんという違いか。僕たちも含めて社会全体として、日本には原子力発電を管理する能力が本当にあるのでしょうか。根源的な問い直しなしには日本の未来はありません。
毎回読ませていただきました。有難うございます。
本当にご苦労様です。元気が出るニュース、楽しみにしております。
Posted by komorebigarden at 2011年04月03日 08:48
ご覧いただきありがとうございました。今後も福島第一原発については重要なポイントは追跡しつづけていきますのでよろしくお願いします。それから今回の記事にさきほど「追記」を書きましたのでご一読を。
Posted by luckymentai at 2011年04月03日 10:22
追記読ませていただきました。ありがとうございます。
3月28日JapanTimesにLessons from Three Miles Islandという記事がありました。白煙を上げる原子炉のそばに洗濯物、ブランコにのる子供の写真。文はワシントンポスト記者。外国語は苦手な自分ですが、海外のメディアに触れるのはとても大事と思っています。立場が違えば発言も異なりますので、グローバルな視野で事実を検証することは大事ですね。今回の原発問題も、ご指摘のようにスリーマイル島の報告を日本の関係者がちゃんと読み、自分の問題として理解していれば、早い対応が出来たかも知れません。不勉強かつ無責任、自分を含めての日本人としての反省です。
また、人間がより幸せに生きていける土台作り文化作りも私たち日本人がおろそかにしてきた部分ではないでしょうか。新しい時代つくりに向かう今こそ無責任社会を卒業しましょう。元気になろうよ、わたしたち!
luckymentaiさんのエネルギーに引っ張ってもらってます!
Posted by komorebigarden at 2011年04月04日 23:12
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回の大災害はあまりにもショックが大きくてどうしてもまだ原発の現実についてよく知らない方、特に福岡周辺の方々に少しでも知らせたいという思いで書き続けています。もうそろそろ回数を減らすつもりなのですが、ついつい怒りがこみ上げてきて今日もこの話題を取り上げてしまいました(笑)。「無責任社会」と聞いて、サンデー毎日の記事の中でインタビューを受けていた佐藤優さんが、文脈の中で放射能と戦う消防士さんや自衛隊員、原発作業員の方々を「無限責任を背負って死と対峙する」人達と言っていたことを思い出しました。この方々の必死の努力を無駄にしては決していけないと思います。原発によって日本人ひとりひとりが「死」の現実に直面させられていることをしっかりと考えて、無限責任までは無理かもしれませんが責任ある人間として新しい社会を作っていかないといけないと思います。
Posted by luckymentai at 2011年04月05日 08:49