2010年01月20日

【グラミン銀行とムハマド・ユヌス】

マイクロ金融は米国で成り立つか?みなさんはグラミン銀行をご存じだろうか?それはバングラデシュにある銀行で、大学教授ムハマド・ユヌス氏が1983年に創設した(今はグラミン銀行総裁)。この銀行は、マイクロクレジットと呼ばれる貧困層を対象にした比較的低金利の無担保融資を主に農村部で行っており、多分野で「グラミン・ファミリー」と呼ばれる事業を展開している。世界的に有名になったのは2006年ムハマド・ユヌスと共にノーベル平和賞を受賞してからだ。その銀行が今米国で事業を展開しているというタイム誌の記事が目にとまった。

「米国でマイクロファイナンスは成り立つのか?」("Can Microfinance Make It in America?" by Barbara Kiviat, p.24-25, TIME Asia issued on January 18.2010)

グラミンは途上国で零細事業に貸し付けている。金融がひっ迫する中、今こそ米国の「無銀行地域」に進出するときだ。しかし、マネーがすべてではない。

Grameen makes loans to tiny businesses in the developing world. With credit tight, now seems like the right time to reach "unbanked" in the U.S. But money isn't everything.

【両極端の国】

マイクロ金融は米国で成り立つか?この記事を書いたBarbara記者の視点は、僕の疑問とぴったり一致した。それは、世界の最貧国のひとつ、バングラデシュの貧困層を対象にした銀行が、果たして世界で最も富裕な国アメリカで商売が成り立つのだろうかという疑問だ。

The question, then, is whether there is a role for a Third World lender in the world's largest economy.

しかし、今のところ、グラミン銀行はうまくやっているようなのだ。一体、何が成功の要因なのか。

ひとつは、米国は貧富の差が激しく、しかも貧困層の多くは移民であり、10万近くある米国の金融機関の顧客対象から外れている人たちがグラミンにとって「優良顧客」になることだ。その数、実に9百万世帯、プラス質屋や日銭の高利貸しに頼っている人たちは21百万人にも及ぶ。

もうひとつは、グラミンの仕組みの根幹をなす数人の互助グループに貸し付けてその信頼関係で返済を担保するというやり方と、零細事業を営む女性たちが貸付の対象だということだ。アメリカには大都市を中心に中南米やアフリカなど途上国から移民してきて、リヤカーで野菜を売ったりしている女性の零細事業者がたくさんいる。その女性たちは固い絆と相互扶助の精神にあふれているのだ。

さらに、グラミン銀行のやり方を熟知したスタッフがニューヨーク、オマハに支店を出し、顧客開拓を上手に行っていることも見逃せない。ラテンアメリカの大手マイクロファイナンス事業者Accionは、90年代に米国に足場を築いたが自前の展開ではなくパートナーの金融機関との連携などで事業を拡大したものの、未だに利益が出る体質にまでは成長していない。

最後に、高い金利が利益をもたらすと見られることだ。高いといってもその金利は15%程度であり、100~200%の貧困層向けの高利貸しが横行するバングラデシュとは比較できないまでも、リスクの高い貧困層向けの金利としては零細事業者の借り手にとってはリーズナブルと言えるだろう。グラミン銀行もビジネスでやる限り、慈善事業ではなく利益を出して事業を存続されていくことが求められるのだ。

【お金より大事なもの】

しかし、グラミン銀行の進出がアメリカの貧しい女性の零細事業者にもたらそうとしている恩恵はお金だけではない。

グラミン銀行の発祥の地バングラデシュでは、グループで貸付を受けた貧しい女性事業者たちがお互い助け合い、生活の質の向上を目指すような様々な工夫が銀行の融資システムに組み込まれている。

アメリカでも、同じようにグループへの貸付というシステムを通じて、女性事業者同士がお互い事業について語り、返済できるよう助け合うシーンが見られるようになっているという。無機質なお金を媒体として、弱い者同士が助け合うことに貢献できるとしたら、これは本当の金融業のモデルだろう。

米国も日本も大いに見習うべきだと思うがどうだろうか。




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