2008年03月03日

【"Short March"って何?】

中国の小行軍-郊外化の先にあるもの鍵を高らかに上げて未来を見つめる大勢の人々。そのタイトルには「China's Short March」(中国の小行軍)とある。2008年2月25日号のタイム誌の表紙を飾ったイラストだ。一体、ショート・マーチとは何を意味するのだろうか?

興味をそそられて、早速そのカバーストーリーをめくってみると最初のページに中国の郊外らしき場所にある売り出し中の豪勢な邸宅の写真があった。

そう、小行軍(Short March)とは1934年10月に国民党の攻勢を逃れるため中国共産党がその本拠地江西省瑞金を離れ、1万2500キロもの大行軍を行った「長征」(Long March)をもじってタイトルにしたものなのだ。それでは一体現代中国の小行軍とはいったいなんだろうか?

【巨大な郊外化のうねり】

それは中国で急速にしかも大規模に進みつつある郊外化(suburbanization)のうねりのことなのだ。

China's Short March-----Millions are moving to newly built suburbs outside China's big cities. Their migration will change the nation ---and the world.

毎年10%以上の高度成長が10年以上にわたって続く中国経済。上海や北京だけでなく中国全土の主要都市では高層ビルが次々と建設され、猛烈な都市化が進行している。そんな急速な発展を遂げている100万以上の都市の数は米国の8つ(2000年現在)に対し、中国では48都市にもなるのだ。

繁栄を謳歌する都市に貧しい農村から3億~4億人もの人々が移動し、建設業だけで18百万人もの移動労働者が従事するのだ。

人が集まればマイナス面も増幅する。工場や車の排気ガスで大気は汚染され、環境破壊が進む都市を逃れて、中産階級の人々が郊外へ郊外へと移動していくのだ。多少の違いはあっても、第二次大戦後に大勢の帰還兵が帰国し、その後も経済発展による都市の荒廃を逃れて郊外へと人口が移動した米国や日本と同じような現象がものすごい規模で今中国で起こりつつあるのだ。

上海だけでも今後10年間に5百万人もの人々が郊外へ移住すると予測されている。そのインパクトは中国だけでなく、世界中に及んでいくだろう。

【小行軍の行く末】

一体、この中国の人々の郊外への小行軍(Short March)はこれからどこへ行くのだろうか?

裕福な中産階級は郊外の恵まれた環境へ移り住むことができるだろう。しかし、冷暖房を完備した住宅から、都市までのマイカー通勤など、今のままではアメリカ型のエネルギー大量消費社会が次々と中国各地に増殖していくことになるだろう。その一方で8億~9億もの貧しい農民との格差は広がるばかりだろう。

グローバリゼーションの恩恵を受け続けようとするならば、中国政府はこの流れを止めることは出来ないだろう。そして、今までエネルギーを浪費し続けてきた米国や日本をはじめとする先進諸国もこのような中国の発展形態を「悪」だと咎めることはできないのかもしれない。

中国の小行軍・・・これは崖に向かって一目散に突き進むネズミの大群を思い起こさせる。いや、中国だけではなく、人類全体に突きつけられたグローバリゼーションの負の側面への重い課題なのかもしれない。

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 1987〜1999年に、中国に何度、市場経済の仕組みを教えに通った事か。良かったのか悪かったのか、いまは黙して唯只、行方を見守るだけです。中国に生まれ、戦後のドサクサを引揚げて来て、1987年の年に再訪した北東中国(旧満州・遼東省)をハルピンから大連まで旧満州鉄道の車両の侭で南下した、そのときの中国の人たちの挨拶のことばは、「吃饭了吗」が「こんにちは、元気?」でした。

Posted by 富山通りもん at 2008年03月03日 05:43

富山通りもんさん、コメントありがとうございます。中国にその当時何度も足を運ばれていたのですか。それにしても忠実に市場経済の仕組みに従って繁栄を謳歌しているように見える中国。そのインパクトの凄さに世界が固唾を呑んで見守っているというのが正直なところですね。でも教えたのは我々の側なのであまり文句が言えないのがつらいところですね。

Posted by luckymentai at 2008年03月03日 20:15

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